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社労士コラム

Column

2018/09/03

平成29年度 「介護労働実態調査」概要のポイントを把握しておきましょう

平成15年(2003年)度から続く「介護労働実態調査」の調査結果が発表

2018年8月3日、平成15年度から続く16回目の「介護労働実態調査」が公益財団法人介護労働安定センターより発表されました。「職員の定着が促進される職場づくり」を重視する介護事業者の皆さまにとって、本調査には様々なヒント・示唆が隠されているのではないかと思います。そこで、今月のコラムでは、特に認識・確認しておいた方がよろしいかかもしれない情報・データを大きく3点、ピックアップしてお届けさせていただきたく思います。「さて、この視点において、自社の実情はどうなっているのだろうか?」是非、そのような視点を持ちつつ、目を通していただければ幸いです。
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では、早速、詳細について見てまいりましょう。まずは、「従業員の過不足状況」に関するデータについてです。

1)従業員の過不足状況について


上記データを見る限り、両者を合わせた「全体」で見ると、「大いに不足」+「不足」で34.0%(9.6+24.4=34.0)、「適当」+「過剰」で33.4%(33.0+0.4=33.4%)というデータが出ています。「大いに不足+不足」「やや不足」「適当+過剰」で概ね3分の1づつに分かれており、「3分の1の事業者は、実は人材に困っていない」というデータに個人的には興味を覚えました。
一方、不足理由については「採用が困難」が88.5%である一方、「離職率が高い」は18.4%に収まっています。そして、「採用が困難な理由」については、下記データが挙げられていました。

3番目の「景気が良いため、介護業界へ人財が集まらない」は2番目の理由にある程度含まれると考えると、上位2点「同業他社との人材獲得競争が厳しい」「他産業に比べて、労働条件が良くない」にほぼ集約されると考えて間違いないでしょう。介護経営者としては「では一体、何が、どれだけ違うのか?」について、具体的な情報収集を行い、比較対照させてみつつ、現実的な対策を検討していく必要があるのかもしれませんね。
では続いて、2つ目のデータを確認してまいりましょう。世間で話題になりやすい「離職率」についてです。

2)従業員の「離職率」について

(※)離職率=平成28年10月1日~平成29年9月30日までの離職者数/平成28年9月30日の在籍者数×100

上記データが示す通り、平成29年度における介護業界の離職率は16.2%で、平成28年度が16.7%であったことを考えると、0.5%の改善が見られています。ただ、平成29年度データはまだ出ていないものの、全産業平均はおよそ15.0%(平成 28 年雇用動向調査結果)であることから、全産業平均に比べると未だ高い数値であると言えそうです。
他方、注目すべきは離職率の「バラつき」です(下記データ)。

このデータを見ると、「離職率10%未満」の事業者が平成29年度においては約4割(39.9%)も存在している事が分かります。一方、離職率が20%を超えている事業者が全体の37.5%。即ち、「全体として16.2%前後のところに集約されている」、その結果としての“平均16.2%”という実態ではなく、“10%未満”と“20%以上”で大きな山が出来ている、即ち“2極化”が進んでいる、その結果として“平均16.2%”に着地した、と捉える方がより現実的ではないでしょうか。
(ただし、ここでは言及しませんが、介護業界は小規模事業者が多い事も含め、単に比率で比較することについても一定の注意が必要であることも念のため付言しておきます)
加えて2)の最後に、勤務年数別の離職率についても確認しておきましょう(下記)。

上記データはあくまで離職者全体数におけるバラつきであり、各勤務年数ごとの全職員数を母数とした比率でないことには注意が必要ですが、一方、「1年未満」「1年以上3年未満」「3年以上」の方々の離職理由は恐らく大きく異なってくるものと思われます。
経営者としては「法人全体の離職率」というマクロデータのみならず、例えば上記の様な「勤務年数別」等の視点で各セグメントにおける離職理由の仮説を立て、各々の対しての対策を講じていく等、より繊細な視点で本数値を見つめていく必要があるでしょう。
それでは最後のデータ「前職の介護職を辞めた理由」について確認してまいりましょう(元データでは理由因子が多岐にわたっていた為、ここでは上位5因子についてのみ記載いたします)。

3)前職の介護職を辞めた理由について(複数回答)


「職場の人間関係に問題があったため」が20.0%で最も高く、次いで「結婚・出産・妊娠・育児のため」が18.3%、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」が17.8%となっています。一概には申し上げられませんが、職場の人間関係が悪くなる理由として、職員間の感情的な軋轢や働き方・処遇の違い等の他に、「職員同士で介護に対する考え方(≒介護観)が異なっている」という要因も現場においてはよく聞く話です。
それらの観点、および上記データの3位に「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため(17.8%)」という因子が位置づけられている点からも、法人としてはやはり「理念」「行動基準」等を明確に打ち出すと共に、それらに合致する職員を採用すること大前提に組織づくりを行う必要性が今後ますます、高まるのではないでしょうか。

自社のデータと比較対照させてみる

以上、3点ほどのデータをピックアップして概要・ポイントをお届けさせていただきました。まだまだ様々な視点のデータ、及び、それらをブレイクダウンしたデータ(統計表)が公表されていますので詳細は是非、文末のURLページを参照いただきたく思います。介護経営に携わる方々、あるいは人事や組織づくりに携わる方々としては是非、単に斜め読みするだけでなく、自社の実情を分析する上での視点・切り口の参考として、あるいは比較対照させる上での参考データとして等、有効に活用されることを是非、おススメする次第です。私どもも今後、さらに有益な情報が入り次第、迅速に皆さまへお伝えしてまいります。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


※「平成29年度介護労働実態調査結果」の参照・ダウンロードはこちらから

http://www.kaigo-center.or.jp/report/h29_chousa_01.html

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