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人材紹介会社に対する「風向き」を確認しておきましょう

2023-05-01
4月14日(金)の「規制改革推進会議」にて、介護業界における「人材紹介事業」の問題点が提起
国として更なる発展を目指すべく、文字通り“規制改革”を主要テーマに様々な切口からの議論が展開されている「規制改革推進会議」。そのような中、「医療・介護・感染症対策」WG(ワーキンググループ)内で「人手不足にあえぐ医療・介護の現場に人材紹介会社が悪影響を及ぼしているケースが見られる」「業界全体の問題として対策を講じていく必要があるのではないか」との問題提起が為されました。どちらかというと規制“緩和”を議論することが多い本会議の中で、今回のように規制“強化”の議論が提起されること自体、個人的には興味を覚えるところですが、それだけこの問題が業界に与えている“悪”影響が大きい、ということなのかもしれません。今回のコラムでは同グループにて示された「(人材紹介事業に向けた対策)提案事項の整理(案)」の内容を確認することで、今後の議論動向をより一層理解する一助となれば、と考える次第です。
「提案事項の整理(案)」その内容とポイントとは
それでは早速、内容に入ってまいりましょう。まずは「人材不足の状況及び対応の全体像」という段落についてです(重要と思われる部分は下線にしています)。

(人材不足の状況及び対応の全体像)
○医療、介護及び保育分野における人材不足は今後も拡大を続ける見通し。厚生労働省において人材確保に向けた一定の対応(資格取得支援等)は行われているものの、現状では、必要となる人材を確保できる見通しは立っていない。

○介護施設、医療機関、保育所等(以下「介護施設等」という。)における人材不足の背景として、他産業と比べた処遇の低さ、業務量の多さや業務内容の評価が不十分等と指摘された。このほか、報酬制度において常勤・専任を前提とする項目の存在(※)、また、有料職業紹介事業者(以下「紹介事業者」という。)に支払う手数料が高騰しており、これが早期離職や紹介事業者の不当な行為と相まって、公費に依存する介護事業者等の経営を圧迫し、賃上げや生産性向上への投資を困難とすることで、一層の人材不足を招来する悪循環を招いていることも課題として指摘されている。
※ 保育の場合には、公定価格における常勤・非常勤の曖昧さが追加的な課題として存在するとの指摘があった。

○我が国の生産年齢人口は 1995 年の約 8,700 万人をピークとして減少を続け、2050 年には約 5,300万人と 2021 年(7,500 万人)に比べ更に約30%落ち込むことが予想されており、医療や介護、保育サービスを維持するためには抜本的な対応を検討する必要。デジタルヘルスや医療・介護関係職間のタスクシェアの推進は論を待たない重要課題であるが、それでもなお、介護施設等の実地で人が行う必要がある業務については、
A 介護施設等におけるサービスの質向上のための処遇改善と業務内容の評価、
B 次期改定に向け報酬制度や公定価格制度における常勤・専任を前提とする項目の必要性の見直し(※)、
C 職業紹介事業の質の向上や適正な競争の促進
が必要となるのではないか。
※ 保育の場合には、常勤・専任を前提とする項目の定義の明確化(前述)と人材確保経費の算入が必要との指摘があった。

○なお、このうち A については、過去10 年以上、厚生労働省においても一定の取組が行われてきたところであり、また、当ワーキング・グループにおいても、特定施設(介護付き有料老人ホーム)等における人員配置基準の特例的な柔軟化(昨年)や介護、障害者、保育サービスにおける管理者等の人員配置基準の柔軟化(昨秋)など様々な課題について議論を行ってきている。その効果について、現時点では濃淡があるところであり、引き続き、中長期的にも強力に推進する必要がある。

今回の資料の中では上記Bに関するコメントの記載を見つけることは出来ておりませんが、こちらについても管理者要件の見直し等が既に進んでいることなどを考えると、今後、更なる改革(緩和)が期待できるのではないか、と思われます。
その上で、今回のコラムの中心論点である「C職業紹介事業の質の向上や適正な競争の促進」について、より深く言及された内容を確認してまいりましょう(下記)。

(紹介事業者の質の向上と適正な競争の推進)
○紹介事業者については、短期的に重要な課題であり、そのサービスの質の向上や適正な競争の促進を通じて、介護職員等の賃上げや前向きな投資につなげることが期待され、スピード感のある取組が必要。なお、その際、医療、介護、保育分野については利用料金転嫁が公定されるといった社会保障制度等(※)に伴う性格があるため、紹介手数料を料金に転嫁し、料金の引上げを通じて人材ニーズが縮小するという意味での市場メカニズムが働かない特質も考慮する必要がある。
 ※ 保育の場合には、利用料金(利用者負担)に転化する仕組みになっていないとの指摘があった。

○具体的には、①悪質な紹介事業者への対策強化、②職業紹介市場の透明性向上、③優良な紹介事業者の選択円滑化が課題として提起された。また、ハローワークの機能強化についても、課題が指摘された。

上記内容を踏まえ、今回、下記のような対策提案が為された次第です。

【主な提案事項】
-悪質な紹介事業者への対策強化
・紹介事業者(※1)に対する職業安定法の指針(全業種を対象)(※2)では、自らあっせんした就職者に対して就業後2年間は転職勧奨を「行ってはならない」旨や、お祝い金制度は「好ましくない」旨(社会通念上相当と認められる程度を超えた金銭等の提供については「行ってはならない」旨)の記載がある(※3)。一方、現実には、「あっせん後の早期転職勧奨」を行ったり「お祝い金制度」を設けている紹介事業者が存在。指針違反に対して行政指導しか行い得ず、また、違反した紹介事業者名の公表も行われない制度の実効性についての指摘もある。
 また、職業安定法では求人者に対して手数料(具体的には、手数料表)を明示することとされているが、「追加の手数料を払えば優先的に人を紹介する」といった実態もあり、明示が必要な「手数料」の内容が不十分との指摘がある。
※1 募集情報等提供事業者についても同様の課題があるとの指摘有。
※2 職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針
(平成11 年労働省告示第141 号)
※3 関連して、制度上、上限手数料が公表されることになっているが、「紹介者の年収の 100%」といった実  例がない上限の公表に実質的な意味は乏しいのではないかとの指摘。

-職業紹介市場の透明性向上
・介護施設等による紹介事業者の合理的な選択を可能とし、あわせて、紹介事業者間の適切な競争を促すため、都道府県ごとに、医師、看護師、介護職員及び保育士といった職種毎に、紹介事業者を経由で入職した者の離職率、手数料の平均値・下限値等を国が公表してはどうか。厚生労働省の人材サービス総合サイトにおける離職人数の公表期間(現在は2年)の延長も必要ではないか。
 また、職業安定法では離職者の数に関し情報の提供を行わなければならないとされているが、「離職が判明せず」といった項目に大多数の紹介者の人数が記載されている企業もあり、不徹底であるとの指摘がある。

-優良な紹介事業者の選択円滑化
・「医療・介護・保育分野における適正な紹介事業者の認定制度」(令和3年創設)について、真に「適正な紹介事業者」を選択できるための認定基準の見直し(例えば、採用後一定期間内(例えば、6ヶ月以内)に離職した場合に手数料の返戻を行うことを認定基準に組み込むなど)が必要ではないか。
・その他、有料職業紹介事業のあるべき内容(求人企業が求める人材に合った求職者の紹介)や離職率水準、手数料設定の在り方を認定基準に追加することも検討が必要ではないか。

-ハローワークの機能強化
・単なる普及啓発に止まらない実効性のある機能強化を行う必要があるのではないか。

「人材紹介会社の問題」で終わる話ではない
以上、4月14日の規制改革推進会議で示された「提案事項の整理(案)」の内容について確認を進めてまいりました。確かに職業倫理に反するようなプロセスを行っている人材紹介会社が存在している可能性は否めず(と言いますか、個人的にも実感するところです)、その意味でも上記に掲げられたような対策が実行されることは業界にとって間違いなくプラスに機能するのではないか、と感じるところです。一方、これらの対策が現実的に実行に移された場合、人材紹介会社としてはリスクヘッジの観点から「人材定着率が高く、組織的にも経営的にもしっかりした法人」への紹介強化をより一層、進めていく方向に舵が切られていくであろうことは想像に難くなく、そうなると、例え過去に取引実績があったとしても、「貴社に紹介しても早期離職につながる可能性が高いので、今後の紹介は控えたい」と人材紹介会社から取引を“お断り”される事業者が増えてくる可能性も十分にあり得るのではないでしょうか。その意味でも福祉経営者・幹部の皆様はこの話題を「人材紹介会社の問題」という認識で終わりにさせず、自社の経営に引き付けて「効果的なアクション」につなげていただければ、と感じる次第です。

※引用元資料はこちら

https://www.joint-kaigo.com/wp-content/uploads/2023/04/wg4.14.001.pdf

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